『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』
『鉄血のオルフェンズ』あまり面白く思えない。
主人公たちのいかにも最近のアニメらしいホモソーシャルな美少年ぶりと、軍事というシリアスな世界観とがどうにも調和していないように感じられる。こういうのを東浩紀だったらセカイ系と言うのかもしれない。主人公やヒロインたち少年少女の意志や決断と、国家規模の政治や軍事が直接に結びつく展開にちょっとついて行けない。
もちろん「それを言ったらおしまい」なのはよくわかってる。ガンダムシリーズはみんな未熟な少年が大量破壊兵器を操縦して戦況を変えていく物語だ。アムロだってカミーユだってバナージだって一方では等身大の問題で思い悩みながら、一方では戦場で大人たちが束になっても敵わない縦横無尽の活躍をする。ガンダムはそういう話だ。
でもやっぱり今回の『鉄血のオルフェンズ』はどうも違和感が残る。というのも、この話あんまり大人が出てこない。宇宙世紀でいうブライトさんがいない、今のところ。少年が状況に巻き込まれて大人たちのなかで成長していくっていう構図は見えなくて、少年たちが大人の役も自分でやって、少年のまま状況を作っていく。今のところこのアニメには主人公たちにとっての「自分より偉い人」がいない。社会的地位の概念がない。いるのは無条件の信頼の宛先としての「仲間」(エンジニアのおやっさんもこっち)や、ロマンスの対象としての「姫」だけ。「父親」「上司」「先輩」が不在。
だからどこか「おままごと」に見えてしまう。本物の人間関係、社会がない。気の合う若い仲間どうしで起業して好きな仕事やってるって感じ。主人公なんかひたすら赤ん坊のように親友を盲信してその指示に従ってるだけに見える、今のところ。
ただ仲間という普遍性を追い求める主人公。それは非常にアニメ的であることは確かなんだけど、ガンダム的ではない気がする。
今回の主人公はキャラクターがすこしヒイロに似ている。そう思えばヒロインもリリーナ的存在に見えてくる。『ガンダムW』は美少年たちが色とりどりのガンダムを乗り回す、まるでラノベのようなガンダムだった。自然主義リアリズムの対極にある、「アニメ・まんが的リアリズム」のガンダムだった。僕はけっこう好きだ。『鉄血のオルフェンズ』は最初こそ『08小隊』のような泥臭い軍隊モノをやるのかと思われたが、もしかしたら美少年と美少女が「きみとぼく」の関係を軸にして世界を再構築していくアニメになるのかもしれない。
『おそまつさん』は最高だった。