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ごくつぶしぶろぐ!

Gokutsubushi's Blog

『アカメが斬る!』アニメ完結。原作の暗さと、アニメの熱さ

 

 

2期に渡って放送された『アカメが斬る!』のアニメが、ついに終わってしまいました。面白かった!満足!

僕はもともとアカメが斬る!の漫画がかなり好きで今でも追いかけているのですが、アニメ版も期待を裏切らず、なかなかの盛り上がりを見せてくれました。正直、中盤はあまりのグロ規制にマジかよ…とゲンナリした場面もありましたが、後半はそれをカバーして余りある熱さを見せてくれたと思っています。原作は暗いところが良かったけど、アニメはこの作品の持つ熱さを前面に押し出した。漫画とアニメの作品性の違いをうまく考慮しているなあと感心してしまいました。

 

 

僕が『アカメ』の原作のどこが好きなのかって言うと、その暗さです。その溢れんばかりのダークファンタジーぶりが最大の魅力と思っています。僕がこの作品の中でかなり好きなシーンが第1話、ナイトレイドがタツミを囲い込んだ富豪一家の邸宅に文字通り夜襲(Night Raid)を仕掛けるシーンであります。

闇夜に紛れて如何にも怪しげに登場したナイトレイドは、邸宅の住人たちを無慈悲に惨殺していきます。ナイトレイドの面々はみな冷淡で、強そうで、得体が知れない感じがして、少年マンガなら悪の軍団と相場が決まっているところです。それを見た主人公のタツミは居ても立ってもいられずに、正義の味方役を買って出る。ところがタツミがアカメと一戦交えたところで、主人公たるタツミ(とそれにシンクロしている読者の我々)の価値観は、唐突に逆転させられます。実は、善人と思われていた富豪一家は田舎から出てきた者を狙って囲い込み、嗜虐することに愉悦を覚える悪党でした。それを知り成敗しにきたナイトレイドは、悪ではなく義賊だった。

つまり、まず第1話で勧善懲悪という簡単な構図を真っ向から瓦解させに来ているんですね。単純な分かりやすい善悪二元論の否定です。悪かと思ったら正義だった、いやでもやはり鬼畜であることに違いない。殺す方も殺されるほうもどちらも惨い。悪を以て悪を制す、乱世です。

 

タツミはその後ナイトレイドに入隊しますが、ボスに腐敗した帝国を打倒する革命軍の計画を説かれ、仲間たちにこんなことを言います。

「成る程、スゲェ…

じゃあ 今の殺しも悪い奴を狙ってゴミ掃除してるだけで…

いわゆる正義の殺し屋ってヤツじゃねえか!」

 これに対して仲間たちの反応が、

レオーネ「どんなお題目をつけようが、やってることは殺しなんだよ」 

シェーレ「そこに正義なんてある訳ないですよ」

ブラート「ここにいる全員…いつ報いを受けて死んでもおかしくないんだぜ」

ここめっちゃ好きです!よくぞ言ってくれた!って感じです。悪党を殺して回る奴らも結局悪党ですからね。こんなやつ殺しちまえってことは、自分も殺されてかまわないってことです。相手も外道、こちらも鬼畜。この暗さ、救いようのなさが原作の素晴らしいところだと個人的に思うんです。

 

でも、残念ながらアニメはそこまで暗くならなかったんです。アニメって声出るし色ついてるし動くから、漫画と違って静かにどんよりと見ることが難しいんですよね。それに漫画を読んでるときって、世界にただ1人ぼっちでその作品に没入している感じがしませんか?それに対してアニメを見るときは、テレビでもネットでも、他人の気配を感じてしまう気がするんです。番組のCMとか動画のコメントが目に入ると、ふっと他人の存在を気にしてしまう。

だから「暗さ」では原作に勝てなかった(と僕は思う)。でもアニメが負けず劣らず発揮した部分があって、この作品の持つ「熱さ」なんです。王道ファンタジーバトルものとしての持ち味を、十二分に発揮してくれました。だからその部分で満足してます。

『アカメ』って日本人の好む燃え要素みたいなものを、かなり強欲に投入しまっくている漫画なんですよね。「帝国末期の乱世」は三国志封神演義、「帝具」は同じく封神演義烈火の炎、インクルシオの「変身」は仮面ライダーなど変身ヒーロー、エスデスの「氷属性」もバトル漫画の定番です。挙げればキリがないほどに、僕たちが多くの作品で親しんできた要素を詰め込んでいる。王道中の王道です。

原作は世界観のベースに「暗さ」があったわけですが、アニメはついに「熱さ」のほうをメインにして完結しました。23話のタツミなんか王道に次ぐ王道すぎて定番だけど逆に燃えてくる。展開の斬新さを問われれば陳腐との謗りを受けそうですが、有効ゆえに多用されるから陳腐にもなるというものですよね。覚醒して変身とか、結局男はこういうの大好きなんだよ!

以前SFには制約とルールがあってファンタジーにはそれがない、ゆえに滅茶苦茶だと書きました。ダークファンタジーである『アカメ』なんかはそのいい例だと思います。出てくるのは原理不明の魔法ばかりで、タツミの「気合い」みたいなものが戦局を変える。「あ、そんなこともできちゃうんだ」って感じです。それでいいんです!ファンタジーは制約がないゆえに壮大になり、読者の想像力をかき立てます。