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Gokutsubushi's Blog

金融は悪じゃない

国際通貨研究所の調査員をなさっている先生のお話。
とっても面白かった。タイトルは僕が勝手につけた

内容は
①進む分業と専門化
②グローバル金融危機の起こるメカニズム
③金融の新しいかたち

金融の知識など皆無だが、門外漢にはプロが失った入門の喜びがある^^

進む分業と専門化

成長=人×設備×分業。
人類は原始時代から現代まで分業を続ける。
夏目漱石は「職業学」を提唱した。それくらい業種が多い。
専門化された末端の仕事をしていると、いま自分がなにをしているのかわからなくなる。

昔はひとつの部署が色々な仕事をやっていたが、今は細分化された部署で専門の仕事をする。
三菱東京UFJ銀行の部署数は、昔の3倍近くになっている。スリム化を目指してきたのにこれ。
銀行職員でも昔の人は話がでかい。銀行全体のことを話せる。総理大臣みたいなスケール。
今の人は自分のやっていること以外がなかなかわからない。銀行全体の大局観が持てない。

専門家が得意分野にあたっても、うまくいくとは限らない。
専門家は素人のわかる言葉で説明できない。素人の疑問点がわからない。
だから素人がレポートを書いたほうがうまくいったりする。必要なのはコミュ力
有名企業の面接で見られるのはコミュニケーションが出来るかどうか、体力があるかどうか。
「ジェネラリスト」が求められている。

グローバル金融危機の起こるメカニズム

銀行に金を預けたら、人はその金がずっとそこにあると思っている。
なのに銀行は人から借りた金を別の企業に貸してしまう。預かった金は手元にはない。また別の人から預かった金で返す。
銀行というのはこうして実際より多くの金を持っているかのように見せ、市場の流通量を増やす。
銀行は「今日突然みんなが一斉に金を下ろしに来るなんてことはあるまい」というギリギリの駆け引きを常にやっている。
その「みんなが一斉に下ろしに来る」事態を取り付け騒ぎと呼ぶ。

金融は世界・国内の金の量を何倍にも増やす。実際は増えていないのに、増えて見える幻想を作り出す。

金融危機はこれまで世界に400回起きている。
1929年の世界恐慌が最悪、2008年のリーマンショックがそれと同等。
2008年の金融危機の原因は①Securitizationと②Globalization。
サブプライムローン証券化と小口化が金融危機を招いた。
金はあるが貸し付けや取り立てはしたくない投資家と、貸し付けや取り立てをする代わりに資金が必要なバンクの利害が一致。
バンクが「特別目的会社」を立て、住宅購入者のローンを証券化して会社が所有。
投資家は会社の社債という形で証券を持つ。証券は倒産可能性と利回りによって何種類かある。

投資の素人化によって、パニック的集団行動が発生する。
素人の投資には3つの特徴がある。
1.Herding
群れ行動。周りの投資家に合わせる。
2.Wake up call effect
目覚める。だれかがリスクに気づき、売り出す。それを見た素人も売る。
3.Contagion
集団感染。売りの傾向と見るや、みんなが売り出す。
素人には状況はわからない。わからないから、できるのは「売れるうちにはやく売る」だけ。

金融の新しいかたち

2008年の大失敗で金融業界もみな反省している。日本でもアメリカでも金融懲罰論みたいなのが出る。
だがアメリカの投資家たちにはあまり反省せず、今も給料をもらっているものが沢山いる。
アメリカの頭取は、日本の頭取の10倍くらいの給料。
日本の金融関係者には公共心があり、アメリカとの違いだと思う。アメリカはマネーゲーム。グリーディ。

「金融の地産地消」地元で取れた預金は、地元の企業へ。

ゼロ成長時代の金融のかたちは、まだわからない。でも考えるべきではある。
当たり前だが金融業界に入った人だって大学でヘーゲルマルクスを読んでいる。
進歩とは何か、資本主義でいいのか考えている。
金融業界にいる人たちも拝金主義なわけじゃない、貪欲なわけじゃない。




金融マンだって市場の外部や経済成長の裏側について考えている。付加価値で表せないものについて考えている。
僕は金融業界にはホリエモンみたいな人種しかいないんだろうと思っていた。
金融は金の量を何倍にも膨れ上がらせて幻想を見せている。それは悪じゃない。
金融マンたちも日本のために働いている。悪じゃない。